top of page

幸せな店主

  • 執筆者の写真: pepo
    pepo
  • 2019年2月26日
  • 読了時間: 1分

「あの店の主人、どうでも良いものほど店に並べて売りさばく」


「店の奥、売りに出されたことがない素敵な品ばかり」


「主人はその秘密を明かす気もない」


「客は皆思ってる、明かせばもっと素敵な店になるのに、と」


「けれどなぜ売りに出さないのか、知る客はいないのだ」


「客は言った」


「奥にある品を並べてくれたら嬉しい」


「もっと店が好かれる、もっと貴方も好かれる」


「いつしか秘密は公然のものとなっていた」


「店主の行いを皆が腕まくりして説得にかかる」


「何日も、何日も説得は続いた」


「とある日」


「店主はやっと頷いた」


「皆が笑顔になった」


「店主以外は」


「彼はただただ悲しかった」


「それから、」


「店はとても繁盛した」


「皆が笑顔」


「店主の秘密はとても素晴らしかった」


「皆幸せになった、けれど」


「しばらくすると店主が首を吊った」


「皆悲しんだ」


「だから店を、皆が引き継いだ」


「皆が笑顔」


「もう誰の店でもない」


「皆、皆の店」


「どうして店主は商品を隠していたのか、悲しかったのか、首を吊ったのか、皆知らない」


ree


2019.02.25

 
 
 

Comentários


© 2023 by Artist Corner. Proudly created with Wix.com

bottom of page