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幸せな店主

執筆者の写真: pepopepo

「あの店の主人、どうでも良いものほど店に並べて売りさばく」


「店の奥、売りに出されたことがない素敵な品ばかり」


「主人はその秘密を明かす気もない」


「客は皆思ってる、明かせばもっと素敵な店になるのに、と」


「けれどなぜ売りに出さないのか、知る客はいないのだ」


「客は言った」


「奥にある品を並べてくれたら嬉しい」


「もっと店が好かれる、もっと貴方も好かれる」


「いつしか秘密は公然のものとなっていた」


「店主の行いを皆が腕まくりして説得にかかる」


「何日も、何日も説得は続いた」


「とある日」


「店主はやっと頷いた」


「皆が笑顔になった」


「店主以外は」


「彼はただただ悲しかった」


「それから、」


「店はとても繁盛した」


「皆が笑顔」


「店主の秘密はとても素晴らしかった」


「皆幸せになった、けれど」


「しばらくすると店主が首を吊った」


「皆悲しんだ」


「だから店を、皆が引き継いだ」


「皆が笑顔」


「もう誰の店でもない」


「皆、皆の店」


「どうして店主は商品を隠していたのか、悲しかったのか、首を吊ったのか、皆知らない」




2019.02.25

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